Project Outline領域概要
植物と微生物の
超個体化の
メカニズムを解明する
地に根を張りその場から動くことのない植物は、生育地の環境変化に柔軟に対応する卓越した能力を備えています。これまでの研究は植物の環境適応能力を個の力として捉え、その分子機構を明らかにしてきました。
一方で、植物がその卓越した環境適応能力を発揮するためには、周囲の多様な微生物群との一体となった協働関係が欠かせないことが明らかにされつつあります。言い換えると、植物が微生物群をいわば「拡張された自己」として取り込むことで一種の高次生命体「超個体」を形成し、その環境適応能力を覚醒させることを示しています。本領域では、微生物との超個体化を通じて覚醒される植物の環境適応の新たな側面を暴き出し、その分子機構の解明を目指す学問分野「植物超個体機能学」の創成を目指します。
Research Groups研究体制
根圏微生物との超個体化が覚醒させる植物の貧栄養適応機構
葉圏細菌との超個体化による植物の気孔動態制御と環境適応
超個体化における植物全身応答とその動態を暴き出す超個体イメージャーの構築
植物と根圏微生物集団は、一種の高次生命体(超個体)として成り立っていますが、そこから生み出される共生(植物成長促進)機能の発揮原理は明らかではありません。本研究では、共生糸状菌Colletotrichum tofieldaieと有用細菌との超個体化により、植物が必須栄養素であるリンや窒素が欠乏した環境に適応する基盤を解明することを目的としています。本研究は、葉圏・根圏に内包される多様な微生物との超個体化を通じて覚醒される植物の環境適応能を、根圏微生物を介した植物の栄養獲得機構という観点から紐解き、本領域に貢献します。
A01研究代表晝間 敬
植物と相互作用する共生菌は植物圏で単独で存在しているわけではなく周りの多種多様な微生物集団と共に生きています。そして、共生菌の周りの微生物も併せて活用することで貧栄養環境下での植物の成長をよりよく促すことができることを発見しています。今回は、この微生物集団が発揮するユニークな植物成長促進基盤を様々な分野を専門とする研究者と共に解き明かしていきます。
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植物は、葉の表面に存在する気孔の開度を調節することで光合成に必要なガス交換と乾燥への適応を両立し、かつ、蒸散による全身的な物質転流の駆動力を生み出してます。気孔の開閉制御を介した環境応答は植物の個の力としてこれまで捉えられてきました。これに対して、本研究では、気孔開閉を操作する葉圏細菌との協働による植物の環境応答の新たな側面を暴き出します。領域メンバーとの密接な連携を通じて、気孔を介した植物の環境適応に葉圏細菌が与える影響とその仕組みを解明します。さらに、研究計画を強力に推進するツールとして、非破壊的な気孔観察デバイスと画像処理による気孔開度の自動定量技術を開発します。本研究は、多様な微生物との超個体化を通じて覚醒される植物の環境適応能力を、葉圏細菌による気孔開閉制御という観点から紐解き、本領域が掲げる「植物超個体機能学」の創成に貢献します。
A02研究代表峯 彰
植物は常に微生物と関わり合いながらその一生を過ごします。言い換えると、微生物との関わり合い方を理解することなしには植物の生き様は語れません。植物生理学、微生物学、バイオインフォマティクス、イメージング、画像解析などに長けた領域メンバー間の学際的融合研究を武器に、まだまだ謎に満ちた植物と微生物の関係性の解明に挑戦します。
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植物は、葉圏・根圏での微生物情報を個体全体で統合し、地上-地下の器官機能を連動させる事で、自らの環境適応能力の飛躍的な向上を達成しています。これまでこの植物と微生物の協奏がもたらす超個体化現象は数多く報告されていますが、地上-地下という異なる空間での植物と微生物との生体応答を体系的に理解する実験系は未だ確立されていません。宮島班では、グループ内の研究者が有する独自の生体イメージング技術や画像解析技術を集結し、植物-微生物相互作用、地上-地下物質輸送、器官成長という「植物と微生物の超個体化」を読み解く鍵となる現象を可視化する研究プラットフォーム「超個体イメージャー」を構築します。それにより、これまでの技術的限界を突破し、葉圏・根圏に分断されていた植物微生物相互作用研究を統一する学術的な革新をもたらします。
A03研究代表宮島 俊介
「視る」ことは、生命現象を理解する第一歩となります。「地上と地下という全く異なる空間で、植物は如何にして微生物との共存関係を構築するのか」、我々の計画班は超個体の理解の第一歩となる「視る」技術を構築し、本領域で掲げる「植物超個体機能学」を推進します。
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A01研究代表晝間 敬
2012年3月に京都大学にて博士(農学)を取得後、2014年までドイツのマックスプランク植物育種学研究所に留学。その後、奈良先端科学技術大学院大学助教、JSTさきがけ研究者を経て、2020年11月より東京大学総合文化研究科准教授 (PI)。